こんにちは、エグゼクティブコーチの大場麻以です。
「帝王学の三原則」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?
恐らく多くの日本の経営者が思い浮かべるのは、伊藤肇氏の著書、『帝王学』で説かれた「師・側近・幕賓」の三原則ではないでしょうか。
しかし実は、帝王学の三原則にはより古く、より本質的な「真の三原則」が存在します。
今回は
- 2,000年を超える歴史を辿りながら、帝王学がどのように変遷してきたのか
- なぜ今、天道・人道・地道への回帰が必要なのか
丁寧にお伝えしていきます。
帝王学の三原則、2つの解釈
帝王学の三原則には大きく2つの解釈があります。
伊藤肇の三原則「師・側近・幕賓」
1973年、伊藤肇氏が『帝王学』を出版しました。
これは日本の経営者に広く読まれた名著です。
その中で説かれた三原則は以下の通りです。
もし、「帝王学とは何だろう」と思って調べたら、「なるほど、帝王学とは政治や経営の成功法則に関する学問なんだな」と思われるかもしれません。
実際、伊藤肇氏の『帝王学』はそのような内容でした。
確かにこれも重要な教えです。無知では何も成せません。
しかし、この三原則には、決定的に欠けているものがあります。
それが「天道」の視点です。
本来の三原則「天道・人道・地道」
実は、2,000年以上前から存在する本来の帝王学にも、三原則があります。
それが、以下の三原則です。
この天道・人道・地道の3つを統合することこそが、本来の帝王学だったのです。
近年の帝王学は、大きく地道に偏っているということが分かると思います。
帝王学2500年の変遷
では、なぜ天道が失われ、「師・側近・幕賓」のような、地道中心の帝王学になったのでしょうか?
2,500年の歴史を読み解くことで、変遷の理由と帝王学の本質が見えてきます。
紀元前1000-500年 易経・老子の時代
この時代の帝王学は天道が圧倒的に中心でした。
天道とは「宇宙との一体化、自然の摂理に従うこと、無為自然、直観で道を見極めること」です。
そのため、リーダーとは天の意志を読み取り、自然の流れに沿って治める者とされていました。
この時代、易経は宇宙の法則を読み解く書であり、
老子は無為自然、道(タオ)を教えていました。
いずれも「天道を極めること」がリーダーの最重要課題だったわけです。
この時代のリーダーは霊性が高く、宇宙と一体となることで民を導いていました。
しかし、この本質的な帝王学は日本にはほとんど伝わりませんでした。
日本に伝わったのは、その後、歴史の荒波に揉まれ、すでに変質した帝王学だったのです。
紀元前500年頃 孔子の時代(転換点)
孔子の登場により帝王学は大きく転換します。
天道から人道へシフトした時代です。
孔子が重視したのは、徳治主義、仁義礼智、人間性でした。
つまり「徳によって治める」という人道です。
天道も重要視されていましたが、以前ほどではなくなりました。
この転換はある意味、必然でした。
なぜなら天道は抽象的で、万人が理解できるものではなかったからです。
それよりも徳を積み、人間性を高めるという人道の方が、より実践的で分かりやすかった。
日本に儒教として伝わったのは、この「人道中心の教え」でした。
たとえば江戸時代の武士は儒教を学びましたが、それは人道中心の帝王学であったと言えます。
この時代から帝王学は「天」から「人」へシフトし始めたのです。
紀元前770-221年 春秋戦国時代
春秋戦国時代、生き残りをかけた競争の中で、帝王学はさらに変化しました。
天道から地道へと、大きく移り変わっていったのです。
この時代に生まれたのが、有名な孫子の兵法、韓非子の法術。
いずれも「いかに勝つか」という実務的な知恵、戦術を説いています。
天道(宇宙の法則)よりも、人道(徳)よりも、戦略、戦術、法術。
つまり地道(実務)が最も重要になったのです。
もはや宇宙との一体化や自然の摂理に従うことよりも、目の前の敵に勝つこと、国を守ることが最優先になりました。
日本の経営者の多くが「帝王学」として学んでいるのは、実はこの時代の教えなのです。
孫子の兵法は、確かに経営戦略にも、経営者の心構えにも非常に有用です。
しかし、これは本来の帝王学ではなく、すでに天道が消え去った地道の教えなのです。
紀元200年頃 三国志の時代
孫子の兵法などに次いで、日本の経営者が最も好んで学ぶのが『三国志』です。
劉備、曹操、孫権、そして諸葛亮。
彼らの帝王学はほぼ完全に地道です。
人材登用、戦略・戦術、権謀術数、「いかに人を動かし、勝つか」、これが全てでした。
もはや宇宙の法則や自然の摂理など顧みられることはほとんどありません。
しかし、日本の経営者はこれを「帝王学」として熱心に学んできました。
経営セミナーで三国志を題材にした講座を受け、ビジネス書で諸葛亮の戦略を学ぶ。
その学びは、天道と人道が欠けた、地道のみという帝王学のごく一部の学びに過ぎないのです。
紀元600年頃 唐太宗の時代
「帝王学」を学ぶために何を読んだら良いか?
そう考えたとき、真っ先に出てくるのは『貞観政要』でしょう。
これは唐太宗の統治の智慧をまとめたものです。
実務的統治、諫言を聞く姿勢、人材登用、といった地道中心の教えでありつつ、人道への言及が回復してきます。
徳を重視する姿勢が、少し戻ってきたのです。
1966-1976年 文化大革命
そして、帝王学の歴史において最も暗黒の時代が訪れます。
毛沢東による文化・思想の大粛清という、中国の文化大革命です。
寺院、神社、歴史的建造物など、多くの文化と伝承が破壊されてしまいました。
古典書物は焼かれ、儒教、道教、仏教は否定、知識人や僧侶は弾圧されたのです。
2500年かけて徐々に失われていった天道と人道は、この10年間でついに完全に破壊されたのです。
そしてこの時期以降、日本に輸入される帝王学的な教えや、中国の経営手法は、手法論中心のものになっていきました。
1973年 伊藤肇氏『帝王学』
そして1973年、伊藤肇氏が『帝王学』を出版。
これは日本の経営者に広く読まれた名著です。
その内容は、師をもつこと、直言してくれる側近をもつこと、幕賓(パーソナル・アドバイザー)をもつこと、つまり人的ネットワークの構築という完全に実務的な内容でした。
ここまでの歴史に学べば、これがすでに「形を変えた後の、地道の帝王学」であることが分かるかと思います。
伊藤肇氏が参考にしたのは主に三国志と唐太宗の時代です。
つまり多くの経営者が知る「帝王学」とは、すでに天道が失われた後の帝王学だったのです。
地道を担うAI、天道の復活
このように私たちが知っている「帝王学」とは、長らく「地道中心」の教えでした。
しかし時代の潮目が変わり、地道中心の時代が終わろうとしています。
実は占星術の観点で見ても、1842年から2020年までの約180年間は「地の時代」と言われていました。
地の時代とは、いわば、努力、根性、競争、効率化、合理性で結果を出し、数字と権威が物を言う時代です。
「24時間戦えますか」
「努力は裏切らない」
「根性で乗り切る」
これらが美徳とされていたことを踏まえても、これまでの経営者は「地の時代の、忠実な地道実践者」であったと言えるかもしれません。
「風の時代」の到来
しかし、2020年12月、約200年ぶりに「地の時代」から「風の時代」へ転換しました。
風の時代とは、精神性、直観、調和、情報、共有、軽やかさによって結果が出る時代。
つまり、天道への回帰です。
- 努力量が結果に反映されにくい
- 積み上げてきたものが崩壊してしまった
- ポッと出でいきなり成功する人が増えた
- 隠されていた「裏」が明るみになった
- 今までだったらありえないことが起こっている
風の時代への完全転換は2024年11月20日でした。
そこからは、地の時代の残滓はいよいよ生き残れなくなりました。
「地の時代に築かれたものの破壊」と「風の時代に適合した形での再構築」のフェーズに入っています。
たとえば2026年であれば、女性総理の誕生、某文書による権威層の闇の露呈、各種AIツールの台頭によるホワイトカラーの無価値化など、「そんなことある?」という出来事が連続しているのです。
風の時代と天道・人道
それだけでなく、AI時代において手法、戦略、実務はAIが代替するようになります。
データ分析、戦略立案、業務効率化、意思決定支援などは、「AIに任せたほうが上手くいく」となっていくわけです。
地の時代×地道において賞賛されてきたものの価値が、一気に値下がりしてしまいました。
地道のエキスパートしての立場を奪われたら、日本の経営者には何が残るのでしょうか?
経営者として、人間として、最後に残された宿題があります。
それが、天道と人道です。
直観、在り方、器、人間力、霊性、それはAIには決して代替できない領域です。
そして、これこそが、風の時代に適合し、風の時代に結果を出していくために必要な要素なのです。
天道・人道・地道の統合
ただし、誤解してほしくないのは「地道を捨てて天道だけやればいい」ということではありません。
いくら地道をAIが担うとはいえ、そのAIを使うのはやはり人間次第だからです。
そのため、真に必要なのは、これまで疎かになっていた天道と人道を強化した上で、天道・人道・地道を統合することです。
天道で方向性を定める
宇宙の摂理を知る、天命を知る、直観を磨く、真我を生きる。これが天道です。
天道が定まると、視座が上がり、物事を見る尺度が長大になります。
この人生だけでなく魂の歴史を、この国だけでなく宇宙全体の調和と最善を考えるようになります。
「一即全、全即一」を体感として理解するようになるので、「自分」がこの人生で何をするのか、迷いがなくなります。
そして迷いがなくなるので、不安や悩みもなくなるのです。
人道で在り方を整える
器を磨く、徳を積む、在り方を整える。これが人道です。
実は天道に通じているからといって、人道も優れているということにはなりません。
たとえば霊性の高さと、人格の高さは別なのです。
社会の中で人共に生きるにあたっては、「人として善いか、人として正しいか」は非常に重要な尺度となります。
人道が整うということは、誰の目にも分かりやすく「素敵な人だ」と感じていただきやすいということです。
周りにポジティブな影響を与えていくには、人道を整え、在り方を極めていくことも不可欠です。
地道で実務を遂行する
戦略を立てる、投稿を作る、広告を出す、これが地道です。
地道を疎かにすれば現実的な成果は出ません。
しかし、天道と人道が整っていれば地道の労力は1/3で済みます。
なぜなら天の法則を知り、在り方を整えていれば、心配することが一つもなくなるからです。
なぜなら心から安心して、「上手くいく」と知っている心で経営していれば、潜在意識が現実への反映に直結する風の時代において、良い結果しか生まれようがないからです。
これが天道・人道・地道を統合した本質的な経営です。
あなたは今、歴史的転換点にいる
日本の経営者として、あなたは今、歴史的な転換点に立っています。
天道が失われた帝王学から、天道と人道を極め、本来の天地人が統合された帝王学へ。
もしあなたが、精神性の大切さを常々感じる一方で、「それでも結局は努力、根性、テクニック、手法論だよね」と妥協を余儀なくされてきたのなら……
この転換期に生きているあなたはとても幸運です。
「精神性重視」は、あなたや私にとってはずっと大切な主義でしたが、一方で世間からは鼻で笑われ、蔑ろにされてきました。
しかし今は、精神性を重んじる在り方を誤魔化すことなく、人として、経営者として成功できる時代だからです。
ぜひ、天道・人道・地道を統合し、風の時代の象徴となる、真のリーダーになってください。















