こんにちは、エグゼクティブコーチの大場麻以です。
たまに、鼻が伸びるところまで伸びきっている社長さんを見かけます。
きっと経営も順調なのでしょう。
表情も明るく、多少の逆境は乗り越えていけるという力強さに満ちています。
実際、事業は順調、売上も右肩上がり、周囲からの評価も高い。
まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」という言葉がぴったりの状態の方がいますね。
しかし、こうした絶好調の時期にこそ、経営者が最も注意すべきことがあります。
易学が示す六龍
『易経』の乾為天という卦には、龍の成長過程が六段階で示されています。
潜龍
龍が水底に潜んでいる状態。まだ力を蓄えている段階
見龍
龍が姿を現し始める状態。才能や実力が周囲に認識され始める段階
終日乾乾
龍が一日中努力を重ねる状態。昼夜を問わず精進する段階
躍龍
龍が跳躍する状態。大きく飛躍するかどうかの分岐点
飛龍
龍が天に昇る状態。最高潮の時期。すべてが順調に進む段階
亢龍
龍が高く昇りすぎた状態。絶頂を過ぎ、下降が始まる段階
この六段階は、すべての物事の盛衰を表しています。
経営者の人生も、事業の成長も、すべてこのサイクルの中にあるのです。
人は「どうすれば亢龍にならずに済むか」と足掻きます。
しかし人が老いていずれこの世を去るように、一生涯の出口、魂の循環の一部として、下降と衰退は免れません。
本当に大切なのは「亢龍としての在り方」です。
風に煽られて墜落するのか、討たれて堕ちるのか、穏やかに揺蕩いながら地に着くのか。
地への降り方について、飛龍のうちによく理解し、実践することが大切なのです。
飛龍の罠。調子が良い時ほど危険な理由
多くの経営者は、飛龍の時代を「成功」だと捉えます。
確かに、飛龍は最高潮の時期です。
事業は拡大し、収益は最大化し、影響力も高まります。
しかし、易経ではこのように表します。
「飛龍在天、利見大人」
龍が天に昇るときは、大人物に会うべし。
つまり、飛龍の時代は決して「安泰」ではなく、むしろ「危機の入り口」だということです。
なぜなら、飛龍の次に待っているのは、亢龍だからです。
亢龍とは「昇りすぎた龍」のこと。
高く昇りすぎれば、あとは落ちるしかありません。
私はコーチとして多くの社長やリーダーを見てきました。
とても優秀で高い成果を出していた方々が、突然大病を患ったり、一夜にして大金を失うというケースを見てきました。
彼らは決して悪人ではなく、真面目な方々なのです。
それでも亢龍時代というのは、飛龍時代の負債があらわになります。
調子が良い時期にこそ、驕らず、慢心せず、経営者は最も注意深く、自分を見つめ直さなければならないのです。
飛龍時代に陰を積む
では、飛龍の時代に何をすべきなのでしょうか?
易学における答えは明確です。
それは、「陰を高める」こと。
陰とは、目に見えない部分、内側、静けさ、精神性を指します。
飛龍の時代は、すべてが「陽」の状態です。
事業は拡大し、露出は増え、活動は活発化する。
これらはすべて「陽」のエネルギーです。
しかし、陽ばかりが強くなると、陰陽のバランスが崩れます。
さながら左翼ばかりが大きく、右翼が小さくひび割れているような状態になるのです。
バランスが崩れた状態で亢龍を迎えると、下降は急激で、破壊的なものになります。
だからこそ、陽の盛りである飛龍の時代にこそ、意識的に「陰を高める」必要があるのです。
陰を高める方法
この法則理解しているリーダーほど、事業に熱量を向けることと同じように、陰の世界を探究するようになります。
しかし「陰を高める」とは、具体的にどうしたら良いのでしょうか。
瞑想をする、感謝を心掛ける、精神性を高める等、方向性としての解はありますが、行動としての解は見えにくいものがあります。
しかし、実は知られていないだけで、もっともシンプルで着実な道があります。
それは「悟りと覚醒を深める道」です。
それはすべての現象と因果が内側から発生していると理解しながら、
視座を上げ、器を磨き、徳を積むということです。
この悟りと覚醒を深める過程においては、「手放す」ことを何度も何度も繰り返していきます。
墜落するのは、持ち物が多すぎるからであり、
誰かに憎まれ攻撃されるなら、それはあなたがかつて誰かを憎み攻撃したからであり
因縁と生霊が重くのしかかるのは、他でもないあなた自身が、相手とのつながりを握りしめているからです。
すでに放った行動と感情を無かったことにはできません。
しかし少なくとも、今持っているものと、当時持っていたものを手放すことならできます。
忙しさにかまけず、こうした陰を高める行為がとても大切なのです。
調子が良いときこそ、悟りと覚醒を深める
ここまで読んで、あなたはどう感じているでしょうか。
あなたがいずれ亢龍と成ることは避けられません。
どれほど優れた経営者であっても、永遠に飛龍の状態を維持することはできないのです。
しかし、「人はいつか死ぬ」と分かっていてもその実感を掴めないのと同じで、
調子が良いときに「いつか来る衰退」なんて想像がつかないかもしれません。
「成功しているときに、わざわざ内省なんてしている暇はない」
そう思われたかもしれません。
しかし、真実は逆なのです。
調子が良いときこそ、悟りと覚醒を深める最高のタイミングなのです。
なぜなら、調子が良いときには「余裕」があります。
精神的な余裕。
時間的な余裕
経済的な余裕。
この余裕がある状態でなければ、本当の意味で自分の在り方を深めることはできません。
調子が悪いときに精神性を磨こうとしても、それは「現実逃避」や「藁にもすがる思い」になりがちです。
しかし、調子が良いときに精神性を磨くことは、純粋に「在り方を深める」行為になるのです。
さらに、調子が良いときにこそ、自分のエゴが見えやすくなります。
「自分はすごい」という傲慢さ
「自分の力で成功した」という思い上がり
「このまま永遠に続く」という錯覚
こうしたエゴは、調子が良いときに肥大化します。
だからこそ、このタイミングで内側を見つめ、エゴを手放していくことが重要なのです。
悟りと覚醒を深めるとは、エゴを手放し、在り方を磨き、器を広げることです。
そしてそれは、調子が良いときにこそ、最も効果的に行えるのです。
易経の六龍は、数千年前から変わらぬ真理です。
すべては循環し、陰と陽のバランスの中にある。
この流れを理解していれば、今何をすべきか、やるべきことは明白です。
潜龍の時期には焦らずに力を蓄え、 飛龍の時期には陰を高め、 亢龍の時期には静かに転換を受け入れる。
これが、単なる社会的成功者を超えた、人間的成功者として在り方なのです。
























